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2005.05.24

ふたりの研究員 とある日のとある時

 研究室には須淡と土院、姿は見えないが加枝がいた。形城はまだ行方をくらましたままだった。須淡はキーボードを叩いていた。土院は腕を組んで目をつぶり、船を漕いでいるようにみえる。加枝はペンをすらすらと動かしてなにか書いている。
 須淡はキーから手をはなして目を閉じて首をゆっくりとまわした。大きく伸びをひとつ。前後に大きくゆれる土院は、はっとなって目を開けた。左右を見る。だれにも見られていないのを確認すると、腕を組み直して目を閉じた。加枝はペンをくるくると器用にまわしている。なにかを考えているときは、一回転や二回転、逆回転などよくペンがまわる。ぴたっとペンをとめると、またすらすらと書きはじめた。

須淡@新人研究員(以下、須)「土院。起きてる?」

 土院はまた船を漕ぎはじめた。

須「……またか」

 加枝がとんとんと土院の肩を軽を叩いた。気づいた土院は機敏に振り返ったがだれの姿もない。加枝がいるのだが、その姿は土院にも須淡にも見えない。土院は時計を見た。

土院@新人研究員(以下、土)「三十分くらいか」
須「よく寝てたよ」
土「目覚めはよくないけどよく寝れたと思うよ。わかっちゃいるんだけど、いまだにだれに叩かれたのかわからなくなって一瞬パニくる」

 そう言いながら腕を組んで目を閉じた。須淡は気にせずキーを叩いている。加枝が使っているペンは、机に置かれたまま動かない。まだ動かない。土院は加枝のペンが動くかすかな音をじっと待っていた。須淡のキータッチ音にじゃまされながら、ほんのかすかな音を聞きの逃すまいとしていた。閉じた目がせわしなく左右に動いている。

「そこだ!」

 加枝がいると直感したところ目がけて、椅子から転げ落ちようがおかまいなく、腕を伸ばせるだけ目一杯伸ばした。つかんだのは空気だった。ペンが持ち上げられ、くるくるときれいにまわる。

須「土院、おもしろい?」
土「一度くらいは勘で当たると思うんだけどこれがなかなか」
須「主任でも室長にはかなわないのに、土院が相手になるわけないって」

 土院は立ち上がって椅子に座り直した。

土「そうか? そのうち勝てる。ぜーったい勝てる! そう思ってれば、そのうち勝てるもんだぞ」

『がんばって下さい』と書いてふたりに見せた。加枝が持つ紙切れは、空中に浮いているように見える。

須「がんばる方向がまちがってると思うけど……もう寝てるし」

 キーボードをかろやかに叩く須淡。腕を組み目を閉じる土院。くるくるとペンをまわす加枝。形城主任のいない研究室は、いつものようにすぎてゆく。

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