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2005.05.18

ふたりの研究員 姿を現さない男

 いつものように研究室のドアを開けてなかにはいると、須淡だけがいた。

土院@新人研究員(以下、土)「あれ、主任は?」

 須淡は机に置かれたメモを指さした。

須淡@新人研究員(以下、須)「どこかいっちゃった。室長がいうには、研究が一段落つくとどこかにいくのは、主任のクセなんだって。だから気にするなって言ってたよ」
土「そーいや、まえにもあったな。メモだけ残して失踪することが」
須「うん」

 土院は須淡の向かいに座った。

土「主任はいない。霜月はいつあらわれるかわからない。室長……そういえば室長は?」
須「いるよ。いつもどおり見えないけど」
土「なんでここの人たちは、姿をあらわさないかね」
須「さあ。そのうち僕たちもそうなるのかな」
土「どうだかな。郷に入っては郷に従えってあるからな。そうなるかもしれねーし、ならねーかもしれん。お前はどっちに賭ける?
須「うーん、そうだな……僕は変わるほうに賭ける」
土「じゃ、俺は変わらないほうに賭ける。いつものルールでいいか?」
須「うん、いいよ」
土「よし。決まりな。室長、どっかにいるんだろ。この賭けの証人になってくれよ」

 コンコンと机を叩く音がした。ふたりは机を見たが、だれもいない。形城の失踪メモに、形城以外の筆跡でまるで今そこで書いてるかのように文字があらわれていく

『喜んで賭けの証人になりましょう』

 すらすらと賭けの内容を書き記し、最後に『加枝 真(かえだ しん)』とサインを入れた。

須「ありがとうございます、加枝室長」
土「まー、いつ賭けの決着がつくかわかんねーけどな。ところで、これでいったいいくつの賭けだ?」
須「僕も覚えてないよ」
土「安心しろ。俺も覚えてない。室長、覚えてます?」

 加枝は『君たちがここに来てからは、初めてだと思いますよ』と書いた。

須「そういえばそうかも。いろいろと考えることがあったからね」
土「ありすぎだ。今だって室長がしゃべらない理由がわからん」
須「それは僕にもわからないよ。なんでです、室長?」

 メモを注視するふたりだが、文字が書かれることはなかった。

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