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2005.04.25

ふたりの研究員 まだ札の男を探る

須淡@新人研究員(以下、須)「形城主任、霜月さんってご存じですか?」

 形城はなにか言おうと口を開きかけたが、土院はそれを手で制した。形城は首を縦にふった。

土院@新人研究員(以下、土)「俺らも会ったんだ。あのヘンな人に。ほら」

 土院は二番の札を形城にみせた。つられて須淡も札を出す。形城もポケットをさぐり、札を出していく。一と二、六と八、二十四の五枚だった。

須「八の次が二十四って……すごいあいだがあいてますね」
土「なんつーいい加減さだ。霜月って人、適当に札をくばってんじゃねーか」

 土院がいぶかしげに二十四番の札を見ると、形城はペンとメモ帳を出してすらすらとなにやら書き始めた。そのペンはとまることなく流れるように文字をつむいでいく。その文字はときにとぎれがなく連なりあった流線型であり、ときに力強く角ばった楷書のようでもあり、不思議と読む者のなかへとすんなりと入っていく。
 文章を読ませるのではなく、文章を自然と読んでしまう。それは空気のごとく、ごく自然に。流れるように。

土「主任、霜月さんはちゃんと順序立てて話しているって、そんなわけねーだろ。そりゃ、向こうの都合で順序立ててるだけだろ? 俺らにはなにがなんだかさっぱりわかんねーよ」
須「そうですよ。言ってることがわからないから、こうして形城主任に聞いてるんじゃないですか」
形城@主任研究員(以下、形)「あ……でも、あ……そう、あ……か。彼、霜月くんが無理。わかろうと私たちの、自体が外……住人だ、認知の。それが……」
土「主任、落ち着いて。手が止まってる、手が」

 気づいたように口をつぐみ、手を動かしはじめる。あれだけつっかえつっかえしゃべっていたのが、ウソのようにすらすらと達筆でわかりやすい文章を書いていく。

土「あ、そうそう。霜月とかゆーのも所長も、なんか俺らには理解できないとかいってた」
須「三次元に特化してるから、という理由だったけど……そもそも十一次元なんていわれても、まったく想像できないしなあ」

 書いたメモ帳をふたりに見せる。
『十一次元はある。だが、私たちには理解できない』

土「所長と同じことをいうな」
須「形城主任にもわからなかったんですね」

 形城は首を振った。

土「え? わかったの?」

 形城は腕を組んで考えこんだ。須淡と土院がじっと見つめる。
『雲のようにつかみどころがなく、詳しく説明しようとそれに近づくと、すべてがうっすらと白いだけでなにも見えなくなってしまう。私にはその程度の理解が限界です』

須「つまり、なんとなくわかったけど、それを説明はできないってことですか……はあ」
形「神鬼、忘れたころに出没。ふっと、気にしない……彼は、あらわれ、ことです……」
土「主任、書いて書いて」
須「いや、だいたいわかりました。つまり、霜月さんは神出鬼没だから、気にしないほうがいいってことですよね」

 形城は首を縦に振った。

土「よくわかったな」
須「慣れだよ、慣れ」
土「やっぱり慣れそうにないから、俺もペンとメモ帳を持ち歩こうかな。いや、知ってますよ。主任、いつも持ち歩いてますから。でも、たまに忘れるでしょ」

 眉根にしわを寄せて土院をにらみつける形城。でも、怒っているというよりすねているようにしかみえない。

土「やっぱり本人に直接聞くしかねーな。よし、須淡。霜月を探しに行くぞ。ありがとな、主任」
須「形城主任、失礼しました」

 須淡と土院はどこに霜月がいるのかもあてもないまま、形城を残して歩いていった。

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